6. 東氏館跡庭園 (とうしやかたあとていえん)
  
 中世における東氏230余年間の居城であった篠脇城跡(しのわきじょうせき)については古くから知られていたが、その生活の場であった館跡については、440余年間全く知られないままになっていた。 この館跡庭園は、昭和54年6月大和町牧(まき)地区のほ場整備工事中発見されて、同55〜58年に第一次発掘調査が実施された結果、数多くの輸入陶磁器片や宋銭をはじめ高級な陶磁器類、木製品、石製品、金属製品など膨大(ぼうだい)な出土があり、東氏文化を知る上に貴重な資料を得ることができた。
 殊に、450年前の姿をほぼ完全に残している池を中心とした庭園遺構(いこう)の検出は全く思いがけないことであった。中島を配した優雅な池泉部(ちせんぶ)は風情まことに素晴らしく、中世武将の館跡庭園として学術的価値も認められ、昭和62年に国の名勝に指定された。
 その後、この館跡庭園は昭和63年から平成元年にわたり、庭石の強化補修工事や第2次発掘調査が行われ、さらに、平成4年に第3次発掘調査が実施されて、館跡庭園の全ぼうが分かった。
 なお、文明3年(1471)6月12日〜8月15日に篠脇城主東常縁(とうのつねより)から連歌師飯尾宗祇(いのおそうぎ)への「後の度(のちのど)」(第二回目)の「古今集講義」および「古今伝授」は、ここ東氏館および対岸の妙見宮において行われたものと考えられる。
 現在、庭園の北東部に古今集ゆかりの草木を植付けて「古今園(こきんえん)」を造成し、この館跡庭園を中心として対岸一帯に、東氏記念館、大和文庫、和歌文学館、篠脇山荘、レストラン「ももちどり」などを建設整備して平成5年7月「古今伝授の里フィールドミュージアム」を開設した。
 なお、19.「東氏館跡出土品(1)」、 119・120.「東氏館跡出土品(2)」参照。