19. 東氏館跡出土品(1) (とうしやかたあとしゅつどひん)
 昭和55年から平成5年にわたり、3回の発掘調査が実施されたが詳細は館跡の項で記述する。出土品のうち復原したものを記す。

大甕(かめ) 2点(鎌倉期)
 1点は、口径約40cm、器高約60cm、胴部直径68.0cm、底径20.0cm。外側に折れる幅の狭い口縁帯(こうえんたい)がつき、その先端はわずかに下がっている。肩などには青黄緑色の自然釉(ゆう)(灰)が部分的にかかり、他の部分は灰黒色で胎土(たいど)には砂粒が入っている。もう一点は、 口径約39.0cm、器高57.0cm、底径約18.0cm、口縁部には幅の広い縁帯が密着し、その最下部は外側に反っている。色調は灰白色で胎土に砂粒がまぜてある。

渦文瓶子(うずもんへいし)(中国産青白磁(せいはくじ))
 梅瓶(ばいべい)と呼ばれるもので、口径3.7cm、釉調は青白色である。

擂座小壷(るいざしょうこ)(輸入陶器、中国産)
 擂座というのは、鋲(びょう)を打ったように壷の頸(くび)の周辺に白色の乳頭様飾りを巡らしたものを言う。源流は中国の五代時代(10世紀)にあるが、鎌倉期にこの手法が伝わり、愛知県瀬戸窯でも焼かれ、茶入れとして用いられた。これは胎土の細かさにより中国産と思われる。東家の人々は京都の貴族との交流が深かったので、東氏館跡からは輸入陶磁器類が多く出土したのである。