60. 応徳寺の絹本着色阿弥陀如来立像
(おうとくじのけんぽんちゃくしょくあみだにょらいりゅうぞう)
 縦85.7cm、横38.6cm。裏書によると、大永(だいえい)2年(1522)実如上人(じつにょしょうにん)から下付されたものである。この像も本願寺通規(つうき)にのっとっており、頭部には肉髻相(にくけいそう)(仏の三十二相の一つ)が描かれている。元来、髪を束ねてつくられた髻(もとどり)で髪そのものであるが、これがのちに頭頂部、すなわち頭そのものの盛り上がりと考えられるようになった。如来が人間の知恵をはるかにこえて、大脳が特に発達していることを示すようになった。
 その下の頭の部分は螺髪(らはつ)といって髪の毛がちぢれ、その形が田螺(たにし)のようである。これはインドの如来像に早くから見られるものである。肉髻と髪の間に小さな紅の楕円が描かれているが、これを肉髻珠という。いわゆる髪を束ねた所で、この部分に珠(たま)をつけたもので、菩薩像が宝玉(ほうぎょく)などの装身具をつけているのに対し、全く装身具をつけない如来像における唯一の飾りといえなくもない。