18. 杉ケ瀬出土五輪塔 (すぎがせしゅっどごりんとう)
 昭和54年7月、島字杉ケ瀬(すぎがせ)付近のほ場整備中、地中から出土した。五輪塔の空・風、水輪だけであったので、他の部分を探したが、発見できなかった。
 石質は安山岩系で白味をおびている。水輪の高さ21.5cm、空・風輪の高さ26.0cmで、推定全高は1m前後と思われる。
 梵字(ぼんじ)の彫りの深さは約1cm刷毛(はけ)書き書体で画の最大幅は2.0cm、文字は中に黒漆(うるし)を塗り、その上に金箔を置き、格調高く、一流石造師の作である(石造物として一級品である)。
 水輪の下部はやや細く、上部に深さ7.0cm、直20.0cmの穴が彫られ、口緑(こうえん)はていねいに縁取(ふちど)りされている。石の表面は美しく風化の跡は全く見られず、出土時金箔は製作時そのままであった。
 この五輪塔は室町時代のものと思われ、同伴出土品である山茶碗、古瀬戸壷(つぼ)破片、土師器(はじき)系小皿などと共に、中世山田ノ庄(やまだのしょう)の歴史解明に重要な出土品である。
 東家の古文書(「木蛇寺殿墳記(もくじゃじどのふんき)」など)の中に、長滝寺と共に塔婆建立(とうばこんりゅう)に着手したが未完であったとの記録があり、その関連も考えられる。