3. 柿本人麿像 (かきのもとひとまろぞう)
 この絵像は、柿本人麿が左手に色紙、右手に筆を持ち、烏帽子(えぼし)をかぶった座像で、本紙縦70,3cm、横34,8cm。掛軸箱入で、箱書に「人麿 信実筆」とある。この絵師信実(1175〜1265?)は藤原隆信の子で、鎌倉時代の画家であり、歌人でもある。藤原定家(ふじわらのさだいえ)の異父兄であり、似絵(にせえ)(肖像画)に秀でていた。
 この絵像の伝来の経路ははっきりしない。しかし、定家の父俊成の時から古今伝授の儀が行われ、祭壇に人麻呂の絵像がかかげられたので、常縁(つねより)の古今伝授時には当然前例に従ったものと思われる。